Gibson Assembly チュートリアル: 基本の Gibson Assembly

Gibson Assemblyを用いてDecorin(DCN)-eGFP融合遺伝子を作ってみましょう。

最初に、eGFPを既に含んでいるVectorを開きます。GFPのスタートコドンの前にDCNを挿入したいので、GFPのCDSアノテーションをハイライトし、5'末端を拡大表示して下さい。もし Translation(シーケンスビューワーの右側のDisplayタブにあります)のチェックボックスにチェックが入っていなければ、チェックを入れて下さい。Gibson assemblyではシーケンスの末端同士を繋ぎ合せるので、最初にベクターをリニア化し、PCRや制限酵素による切断を使用したATGコドンの前にその"末端"を作成する必要があります。特異なNcoI制限酵素サイトがあるので、それを使ってベクターを分解することができます。実行するには、 Cloning > Digest into Fragmentsを開いて下さい。NcoIのみが選択されていることを確認して、OKをクリックします。





結果のシーケンスは、Gibson AssemblyでT5エキソヌクレアーゼによって分解される2つの5'オーバーハングを有します。オーバーハングの除去ではタンパク質のインフレーム(遺伝子の翻訳領域内にあること)状態は保たれますが、スタートコドン(ATG)が除かれてしまいます。ATGを残し、かつCDSを切り捨てないように、ベクターに再度5'末端を加えます。Allow Editingボタンを押してシーケンスを編集できるようにしてから、下図のように、無くなってしまった塩基ATGを手入力で加えて下さい。この手動の編集は反応には影響しません。手入力の挿入、削除、置換はGibson Assemblyの操作の間考慮され、プライマーの伸長に含まれるためです。Saveをクリックして変更を保存して下さい(ドキュメントのParentリンクが必要ない時は、Deactiveを選択して下さい)。 ベクターの一番最後の方までスクロールすると、もう一方のCATG NcoIオーバーハングがあることに気づくと思いますが、翻訳を邪魔しない限りこのシーケンスには着目する必要がないので、ここは何もする必要がありません。



ベクターについてはこれで操作が終わったので、DCNに進みましょう。私たちが行いたいのは、GFPの前に、ストップコドン無しにこのCDSを入れることです。Translationにはチェックが入ったままにしておき、最後のUAA以外のCDSの塩基を選択します(CDSアノテーションをクリックして、Shiftキーを押しながら"UAA"の直前をクリックすると簡単です)。プライマーを使用せずにこの部分を抽出します。プライマーはこのGibson Assemblyの操作の後半でGeneiousが生成してくれます。更にGeneiousは自動でU(RNAの塩基)をTに変換してくれるので、気にしなくて大丈夫です。シーケンスビューワーのExtractをクリックし、"DCN CDS"のように、適当に名前を入れて下さい。

では、抽出されたDCNと切断されたベクターのシーケンスを選択して下さい。Cloning > Gibson Assembly...をクリックします。Backboneドロップダウンメニュー(Geneious R8以前ではVector)で切断されたベクターを選択します。下のInsertsボックスにはDCNのみが表示されているはずです。

Geneious 8.1以上では、Gibson Assemblyのウィンドウを開く前にインサートとベクターを予め選択しておく必要はありません。代わりに、Chooseをクリックすることで設定ウィンドウ内で選択できるようになっています。

ここで、他の設定をチェックします: Min Overlap Lengthは18bpがお薦めです。これはアニーリングの塩基長です。2つの隣あったシーケンスの相補的なシーケンス部分が、後の操作で共通部分を持つようになります。2つのインサートを繋げる際に、それぞれプライマー伸長として、これの半分の長さを有します。今回のケースでは、一つのシーケンスを一つのベクターに繋げ、プライマーは挿入するシーケンスに対してのみ作成されるので、インサートプライマーは全長18bpの伸長部分を持つことになります。 Min Overlap Tm(48℃)は相補シーケンスの融点です。 Tm Calculationパネルを開いて下さい。これらの設定はプライマーの結合サイトと伸長の設定に使われます(両方とも独立して計算されます)。多くのラボはPhusion Polymeraseを使用し、Breslauer et al.によって発明された式で推奨Tm値を計算するので、Formulaではそれを選択して下さい。設定が完了したら、OKをクリックして下さい。

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小さいウィンドウは進捗度を表しています。待ち時間は数秒程度です。 新しい Gibson Report ドキュメントがシーケンスビューワーに現れます。Hintsのセクションで、NcoI切断で生成された5'オーバーハング塩基がシーケンスから除去されているお知らせが出ているのが見えます。

今のところ最も重要なのは、Generated Primer の表です。プライマーは、インサートシーケンスに結合するようにデザインされています。また、隣接するベクターシーケンスにホモロガスな伸長部分があります。表中では、フォワードプライマー()が左に隣接するシーケンスへの伸長部分を含み、リバースプライマー()が右に隣接するシーケンスへの伸長部分を含んでいることが分かります。緑の文字のリバースプライマー伸長部分を見ると、"cat"の塩基配列(下のスクリーンショットの赤くハイライトされた部分)があります。-これは私たちが前に挿入した、スタートコドンの鋳型です。リバースプライマーなので、スタートコドンはATGの逆相補で表示されています。伸長部分の全長は組換えの長さまで伸ばされているので、インサートとベクター間の相補塩基長はやはり18bpです。



結果を確認するために、表中のProductのリンクをクリックします。DCN CDSはGFP CDSの前に挿入され、両方のプライマーによって隣り合っています。プライマーのアノテーションにマウスオーバーすると、そのプライマーの特徴、結合シーケンス、伸長シーケンスを見ることができます。



GFPへのインサートの変遷部分へ少しスクロールすると、挿入されたATGが手入力で挿入されたシーケンスであることがわかるようにアノテートされているのを見ることができます。翻訳部分は、メチオニンとGFP CDSが完全に翻訳領域内であることを示しています。



よかったらプライマーをオーダーする前に、融点が大丈夫かを確認して下さい。

これでGeneiousでのGibson Assemblyのシミュレーションができました。


Exercise 2: バッチクローニング(応用)